5.プロジェクトマネジメントまとめ

5.プロジェクトマネジメントまとめ

「よくわかるプロジェクトマネジメント」でプロジェクトマネジメントの基礎を学習した内容をまとめ。

プロジェクトマネジメントまとめ解説

プロジェクトマネジメントで便利な考え方、ツールがある。長年にわたって蓄積されてきたノウハウ。チームで仕事するときの進め方の基本。

プロジェクト組織

プロジェクトマネージャーは、プロジェクトを進めるために必要な人員を組織(チーム)化する。その臨時の組織を「プロジェクト組織」という。

組織には

  • 機能組織
  • プロジェクト組織

がある。

機能組織

工場の組織の場合のように、それぞれの担当(専門)部門がある。部門間の調整はラインを通して進めることになり、プロジェクトマネージャーも専任ではなく、プロジェクト運営には適していない。

プロジェクト組織

プロジェクト推進のための専門組織で、機能部門からプロジェクトの担当者が専任され、プロジェクトマネージャーの指揮下で動くことになる。担当者がプロジェクトの目標のために効果的に活動する事ができる。

  • プロジェクト型組織
    • プロジェクトマネージャーの権限が強く、関係性も密になり、プロジェクト遂行のために強い組織になる。ただし、プロジェクト要員が一定期間は専属となるため、組織全体としての人材の有効活用に難点あり。例えばプロジェクト終了後に要員の配置が要員ではなく、ノウハウやスキルが分散してしまうという問題がある。技術面ではマトリックス型組織の方が、その原籍に所属していることから他のプロジェクトへの情報が移転しやすく、技術の蓄積が用意。などの利点がある。
  • マトリックス型組織
    • 担当部門の要員が、その機能部門に所属しながらもプロジェクトチームの担当者なる組織。マトリックス型組織の場合、担当者が所属する組織の上司とプロジェクトマネージャーという2名の上司を持つため、上司間の調整が必要になる。

という形態がある。それぞれ長所、短所あり。

プロジェクトマネジメントオフィス

プロジェクトの組織に、プロジェクトマネジメントオフィス(PMO:Project Management Office)という形がある。

PMOの目的は、組織内で同時並行的に遂行される複数のプロジェクトを円滑に進めることにより、組織全体の最適化を実現すること。

現在のPMOはビジネスニーズに応じて多様化し、プロジェクトに特化したPMOではなく、定常的に組織として存在するPMOが増えている。

適用もさまざまでプロジェクトの特性、組織の規模、企業戦略の内容などにより位置づけも異なり、多くのバリエーションを持っている。

一般的なPMOの主な役割

  • プロジェクトマネジメント業務の支援
  • プロジェクト間のリソースやコストの各種調整とプロジェクト環境の整備
  • プロジェクトマネジメントにおける研修などの人材開発
  • 付随するプロジェクト関連管理業務

PMO導入のメリット

  • 教訓・手法・ベストプラクティスの共有
  • 品質の向上
  • 関連リソースの確保・調達の迅速化

企業経営でのメリット

  • プロジェクトマネジメントとの手法・知識の標準化
  • プロジェクトの優先順位づけ、経営判断の迅速化
  • 人材の安定的な育成

PMOのプロジェクトへの関与形態

  1. 支援型PMO:各組織へのサポート的な役割
  2. 管理型PMO:管理機能を持ち、プロジェクトに対してモニタリング活動を行う
  3. ライン型PMO:プロジェクトマネージャーの専門集団としての機能を持つ

に代別されるが、複合の形態も多く存在する。

タイムマネジメント

プロジェクト遂行で重要なことに、時間の管理があります。成果物は決められた予算と時間(期限内)に完了されることが重要な宿命。

例えば、新製品開発というプロジェクトでは完成時期がビジネスチャンスに直結し、新製品の優位性の確保という意味で重要。

タイムマネジメントでは時間軸上で最も効率的な業務手順を計画し、これに従って進捗をコントロールし、計画変更を起こす要因を予見、管理する。実施の段階では実績情報と計画との乖離を把握し、その要因は何かを把握して対策を講じる必要がある。なお、定義われたタイムマネジメントはスコープマネジメントとコストマネジメントとの相関関係がある。

また、プロジェクトは全行程を通して個々の作業が密になっているため、作業の遅れは後続の作業の遅れになり、工期の調整が必要となる。対策として人員を投入すると資源の追加となり、コスト超過の原因ともなる。工期の元首には、メンバーが全体のスケジュールを把握し、責任を持ち、担当作業を計画通りに完了させ、あとの工程につなげるという高いモチベーションが重要。

スケジュール作成は、スコープ計画で当該プロジェクトのWBSを構築し、次にWPを定義するこから始める。

作業順序を設定し、アクティビティに資源を割り当て、所要時間の見積(何人で、いつまでに終わらせるか)を行う。

WPの要素(いつ始まって、いつ終わるか)が合うまで作成を繰り返してスケジュールが作成される。この段階でプロジェクト予算も設定される。

プロジェクトスケジュール作成のプロセス

  1. スコープ計画
  2. WBS、スコープ定義、作業定義
  3. 資源計画
  4. 所要期間見積
  5. Work Package、コスト積算、作業順序設定
  6. スケジュール作成
  7. リスクマネジメント計画
  8. 予算設定
  9. プロジェクト計画作成、Network Diagram

スコープはWBSで構成。

クリティカルパス(最長経路)

スケジュール管理手法で重要なツールにクリティカルパス法(CPM:Critical Path Method)がある。

仕事の手順として、それぞれの作業に前後関係をつけていくと、プロジェクトの開始から終了までに、さまざまな作業の連なりである経路(パス)ができる。

これらの経路のなかで、各作業の所要期間の合計が最大なものが必ず一つ以上ある。この経路上にある作業が一つでも計画から遅れると、プロジェクトの就業が遅れる。この経路のことを「クリティカルパス(最長経路)」と呼ぶ。

スケジュールを経過うするときは、このクリティカルパス上にある作業を、どのように進めるかを全体工程のなかで重点的に検討する必要がある。計画したスケジュールが予定通りに進まないなどの問題がある場合、クリティカルパス上の作業に注目して計画を見直す。

プロジェクトの実施において、クリティカルパスのなかにある作業の監視を重点的に行うことが大事。

クリティカルパスではない経路の作業には「フロート」という余裕期間があり、その期間以内であれば作業が遅れたとしても全体に影響を与えることはない。ただし、クリティカルパス上の作業が計画よりも早くかんりょうした場合には、ほかの経路がクリティカルパスとなることがあるので注意が必要。

プロジェクトの進行中は常にクリティカルパスの動きを監視し、遅れが出た場合、対策をする必要がある。

用語:クリティカルパス
プロジェクトの最も長い経路(パス)。フロートがゼロの作業で構成。

用語:フロート(余裕期間)
プロジェクトの完了日を遅らせずに、作業の最速開始日を遅らせることができる期間。

アーンドバリューマネジメント

アーンドバリューマネジメント(EVM:Earned Value Management)の目的は、プロジェクトの進行状況を監視して、プロジェクト全体の進捗条項を把握する一つの方法。これは、アメリカの大規模政府調達において、発注側が効率的なプロジェクト運営を目指すために、プロジェクトの進行状況を受注側から報告されせるために開発された考え方。

民間プロジェクトの場合は、厳しい予算とスケジュールのなかで、自社内のプロジェクトや受注プロジェクトの進行を把握、コントロールすることが目的となる。

単なる進捗を測定するだけでなく、このまま進めるとプロジェクトの終盤で予算やスケジュールがどうなるかを予測し、早期に対応策を実施することにEVMの意味がある。

  • 管理のためのベースライン(PV:Pranned Value)
  • 現状の作業出来高(EV:Earned Value)
  • 実際の発生コスト(AC:Actual Cost)

の三つから、進行状況とパフォーマンスが割り出され、プロジェクトの最終推定コスト(EAC:Estimate at Completion)の予想が可能となる。

コストと時間で進捗管理

  • 出来高(EV)(アーンドバリュー)
  • 期間予算(PV)(ブランドバリュー)
  • 発生コスト(AC)(実コスト)
  • スケジュール差異(SV=EV-PV)
  • コスト差異(CV=EV-AC)
  • 完了時総予算(BAC)(完成時総予算)
  • 最終推定コスト(EAC)
  • 完成までの予算額(ETC)
  • スケジュール効率指数(CPI=EV/AC)
  • スケジュール効率指数(SPI=EV/PV)

リスクマネジメント

リスクは起きることを前提にして検討することが重要

  • リスクを事前に想定、生じた際の対策の準備
  • プロジェクトの期間中の継続した監視
  • リスクの兆候が表れれば対策の実施
  • 新しいリスク発生の監視
  • 正しい手順での管理

などのプロセスをリスクマネジメントという。

最初に行うのは、どのようなリスクがあるのか識別。

次に、その識別されたリスクが生じたときに、どのような影響をプロジェクトに与えるかを定性的、定量的に分析し、順位付けして、重要度の高いものから順に、リスクが具現化したときに講じるべき対応策を計画する。

リスクの対応

  1. 回避:代替案の実行など対象作業を行わない
  2. 転嫁:リスクを第三者に引き受けてもらうこと。コストを伴う。
  3. 軽減:共同体などにリスクを分散し、リスクの影響をすくなくすること
  4. 受容:リスクを識別するが、対策をしないこと

という方法があり、どれを選ぶかは計画の段階で想定し決めておく。

リスクが生じて適切に対応できた場合にも新たなリスクが残る場合もあり、十分な注意が必要。

これらは初期計画の段階にのみ行われるものではなく、繰り返し行われる必要がある。得たリスクに対する教訓は整理し、知識としてデータベース化してプロジェクトの実践において活用していく必要がある。

リスクマネジメント

  1. リスクマネジメント計画
  2. リスク識別
  3. リスク分析(定性的、定量的)
  4. リスク対応計画(回避、転嫁、軽減、受容)
  5. リスク監視・コントロール

コミュニケーションマネジメント

プロジェクトを進めるうえで、ステークホルダとの円滑なコミュニケーションは重要。

コミュニケーション計画とは、どのような情報を、いつ、誰に、どう伝えるかを決めること。一般的には顧客、社内の関係組織、そして、取引先とのコミュニケーションが対象の範囲。

プロジェクト関係者を一覧表、または組織図にまとめ、確認できるようにして連絡窓口を決める。

プロジェクト文書の種類や文書番号の体系化して文書ごとの連絡手段を決めておく。コミュニケーションをより確実なものにするために、あらかじめ定期進捗報告会議などを計画する。会議の結果である議事録も確実に残すようにする。

プロジェクトの重要事項の承認ルール、情報の保管方法の取り決めも必要。保管される情報は改訂履歴が明確になるように文書の名称、あるいは文書番号に工夫を施す。

規模が大きい場合は、このようなコミュニケーションのルールを計画書としてまとめ、確実に運用されるように周知徹底する。

ステークホルダが多くなるとコミュニケーションは複雑になるので、コミュニケーション計画によって統制のとれた情報交換が行われるようにしなければならない。

コミュニケーションの失敗は、プロジェクトの運営が滞るだけでなく、成果物の品質にも影響を与える。間違った情報や古い情報を伝えないこと、複数の発信源から類似情報を流さないこと、そして、依頼内容や支持を明確にして、関係者が混乱なく行動ができる情報発信を行うことが大事。

情報の一元化が重要。関係者が増えると、爆発的にコミュニケーションチャネルが増えるので要注意。

キックオフミーティング、設計書審査会議、定例打合せ、進捗検討会議

品質マネジメント

プロジェクトでの品質は「成果物が要求事項を満足していること」を「品質」として定義。

プロジェクト目標を達成するために求められる品質が達成されていなければならない。そのためプロジェクトマネジメントでは、プロジェクトの実行を通じて要求事項を満足する品質を達成するための活動を「品質マネジメント」と呼ぶ。

品質マネジメントの基本は

品質は管理するもでなく、計画するもの

ということ。つまり

成果物を検査して品質を確保することだけなく、初期段階に要求事項を十分把握したうえで、それをどのように実現いていくかというプロジェクトの方法、手順(プロセス)を確立して、品質を保証していくという考え方。

品質マネジメントは以下の手順で行われる。

  1. 品質計画:成果物である製品やサービスへの要求に基づいて達成すべき品質水準を設定し、その指定した品質水準を満足するための方法、手順を、スケジュール、コスト、組織、責任範囲などを調整して計画。
  2. 品質保証:要求品質が十分満足することを保証するために、必要な証拠を提供する活動。
  3. 品質管理:成果物が設定した品質水準に適合しているかどうかを検査し、不適の際には原因究明、改善措置を講じる。

似たような定義の用語にグレードがある。グレードとは同一の用途を持つ製品やサービスについて、異なる品質要求事項に対して与えられる区分、もしくはランクのこと。

品質は要求事項の満足

品質は計画するもの

契約管理

プロジェクトは契約に基づいて遂行される。相互の意思決定の結果であり、当事者間の法律や規範になるものが契約書。契約書双方(発注者と受注者)の権利や義務が記載される。

請負契約における契約書の主な記載事項は、

  1. 目的
  2. 履行期限
  3. 検収基準
  4. 契約代金の支払い時期および方法
  5. 契約履行場所
  6. 契約金額
  7. 履行遅滞や債務不履行の場合の処置
  8. 瑕疵担保責任
  9. 不可抗力
  10. 紛争解決方法

工事請負契約の場合には仕様書、設計図などが添付され、プロジェクト遂行中に双方が合意した覚書なども契約書の一部を構成することになる。

契約書通りにプロジェクトが遂行されているかを確認し、逸脱したものがあれば是正する。このプロセスを契約管理という。

契約上のトラブルが生じた場合、まずは事実を正確に把握し、契約相手との協議で解決策を見出すことが大切。双方で解決に至らない場合は、契約書の紛争解決方法に従って解決を図らなければならない。

何気ない行為が契約上のトラブルになる場合もあるので、契約書の記載されている権利や義務が、プロジェクト遂行における重要な意味を持ってるということを理解することが大切。

プロジェクトマネジメント自身が、当該プロジェクトの契約内容を十分理解することは必須であり、プロジェクトメンバーにも契約書の内容を理解っせるように努め、プロジェクトの業務を進めることが必要。

エンタープライズ・プロジェクトマネジメント(EPM)

プロジェクトマネジメント方式による組織運営(Management by Projects)の発展型。EPMには二つのタイプがある。

  • 製造業などで、プロジェクトマネジメントを基軸に事業(部)運営を行って企業革新を図ろうという試み
  • エンジニアリング会社などで、個別プロジェクトごとのプロジェクトマネジメントはあるが、会社で統一さいたプロジェクト運営基準やプロジェクトマネジメントプロセスを設け、計画、管理ツールを横断的な対応ができるように改良し、プロジェクト全体の最適管理を実施する。

EPMの狙いをいかにまとめる。

  • 新規の事業や課題の対応にプロジェクトマネジメントが持つ、目的の定量化、作業の分析、工程の明確化、進捗の可視化などの手法を応用して、迅速な立ち上げと問題解決を図る。
  • 事業全体をプロジェクト群として捉えて、事業戦略に従って優先順位の設定と案件の組み合わせの最適化を図る(プロジェクト・ポートフォリオ・マネジメントの応用)
  • プロジェクト運営の共通項的な仕組みや手順、ツールなどを全社でまとめて開発、保守し、活用する。

EPMでは、全体最適化の観点から組織全体のプロジェクトマネジメント能力を継続的改善で高めていくことも重要な任務。EPMを採用する企業には、通常、プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)といわれる組織があり、プロジェクトマネジメントの推進と活用を支援する。

用語:EPM(Enterprise Project Management)
企業(Enterprise)内の活動をすべてプロジェクトとして捉えて管理する。

複雑な課題はプロブラムで

プログラムとしての考え方は、企業革命、ビジネスモデル再構築、研究開発、大規模ICTシステム開発、広域開発などの場面に活用されている。

プログラムマネジメントはプログラムの全体使命(ミッション)を実現するために、プログラムの価値が最大になるように「構想・企画」→「構築・開発」→「運用・利用」までを一貫して検討・考察し推進するマネジメント手法。

複雑で多様な課題がからみあった要求がある場合はプログラムとして対応。しかしプログラムは複数の課題があり拡張性もあるため、全体の要求がわかりにくいという特徴がある。

そこで「あるべき姿(理想)」を描き、

次に「ありのままの姿(現状)」を認識・分析する。

そして「ありのままの姿」から「あるべき姿」へ至るための課題を抽出、複数のプロジェクトとして創生、全体使命(ミッション)の実現へ、プログラムの価値が最適にとなるようにプロジェクト群の関係をミッションファイリングとして組み立てる。

プログラムマネジメントは複雑な課題に柔軟に対処するために、プロジェクトサイクル結合として「スキームプロジェクト(構想・企画)」「システムプロジェクト(開発・構築)」「サービスプロジェクト(運用・利用)」の三つのプロジェクトを組み合わせて考察する。特にサービスプロジェクトに視点をおいた組み立ては大事。

日々の仕事にプロジェクトマネジメントを活用しよう

プロジェクトマネジメントは「段取り八分、仕事二分」(事前準備をきちんとしたら、仕事の八割は終わったと同じ)ということわざを、具体的に実施する方法。仕事を見える化し、何を考え、どの順序で実施していくかの基本を示す。

プロジェクトマネジメントの意義はプロジェクトを合理的に計画し、いかに効率よく遂行して完成させるか。また得られた供給を次のプロジェクトい生かして成功させるか、そして、人材をのように育成していくか。さらには、プロジェクトマネジメントを応用し、新しい事業の創出へ貢献するという期待も広がる。